エクス ✕ フォーメーション

明日使える中二知識

演技のステップ

いい演技とは

  1. 今に居る(カメラの前で今の瞬間に生きることができる)
  2. 密着(相手役と交流することができる)
  3. 内的行動、驚き(相手のセリフが聞けて、相手にセリフを伝えることができる)
  4. 台本分析(台本を読み、キャラクターの目的を導き出せる)
  5. 自分のパターンを崩す(カメラの前で自由に動ける体を手に入れる)

1. 今に居る

いい演技をする上で必要不可欠なのが「今にいる」ということ。今に居ることでカメラの前で、その瞬間、瞬間を生きることができます
カメラの前で演じることは特殊な状況で、緊張するものですよね
例えばカメラの前で「恋人とふたりっきり」という設定のシーンを演じることは簡単なことではない。
緊張やプレッシャーによって頭が真っ白になることもあるでしょう、それは「今(その物語の中)にいない」状態といえます
これを解決するには、今の自分の状態をよく観察して素直に認めていくことが重要です

心のなかでは「頑張らなきゃ」「ヤバいヤバい」「家でゲームがしたい」など色々な感情がありますが、今に居続けるためにはそれらを認めた上で、五感を意識することが有効。
特に触覚を意識するといいです。
触覚、まばたき、視覚や聴覚に意識を向ける、今の自分の状態を認めることで今に居ることができます。

また、セリフが飛んだなどの恐怖体験は積極的に思い出すことで、その状態に慣れ、恐怖心がなくなり不安がなくなっていきます。

2. 密着

カメラの前で相手役とコミュニケーションするためには、相手役とまず初めにつながる(密着する)ことが大切になります。

相手役と心の距離を(実際の肉体的な距離感以上)に近い関係性にする。自分で意図してやることを「密着」と呼びます。
・自分の体のまわりにサークルのようなものイメージ、20cm ~ 30cm程度
・同じように相手役のまわりにもサークルをイメージ
・イメージができたらサークル同士をつなげて一つのサークルにする。水滴同士が1つの水滴になるように。
・相手の存在を自分の方へ引き寄せる。実際の距離が離れていても、サークル内の自分の近くへ引き寄せ、近くにいることをイメージする

これにより相手と心を通わせることができる。

3.内的行動、驚き

セリフを聞く
セリフを聞くときは、「驚き」というテクニックが有効。驚きとは「インナーモノローグ」という心のセリフを使って、相手のセリフに驚いていくことです。
インナーモノローグは自分(体)の内側ではなく、自分(体)の外側で言うようにします。マンガの吹き出しのイメージです。

重要なことなのですが、演技をしているときは自分の内面に意識を向けてはいけません。 (触覚などの五感は、心から見れば外側です)
もちろん演技をしていく中で感情が動いたり、色々な考えが浮かんでくることは演技がうまく行っている可能性が高いです。
ですが、その感情や考えに意識を向けてしまうと「今」に居なくなってしまいます。そうすると相手と交流ができなくなってしまいます。

驚き

具体的には、「はっ?」「はぁ?」「何々?」(思いつく驚きの言葉なんでも)をインナーモノローグで意識的に言っていきいます。
意識的に驚くことで相手のセリフを新鮮に聞くことができます。

セリフを伝える

セリフを伝えるテクニックとして、「内的行動」がとても重要になります
やってはいけないのが、セリフに抑揚や強弱をつけること。
普段、人と会話をしていてしないですよね。相手の言葉に腹が立って、結果的に声が大きくなったり、ある言葉が強調させるのが理想です
では結果的にそうなるためにはどうすれば良いのか、そこで「内的行動」の出番です。
※補足:抑揚や強弱をつけて話すことを「歌うように話す」と呼んでいます。ここで言いたいのはわざとらしくやるのがダメということです。とくにシェークスピアなどの古典やアニメ等、現代劇でない場合は歌うように話す場面は多々あるでしょう

内的行動

ちょっと思い出してもらいたいのですが、
朝、職場や学校で機嫌が悪い先輩がいたとします。あなたはそれを見ただけで「やべぇ、機嫌わるそうだから近寄らないでおこう」と思ったことがあるでしょう。
その機嫌が悪い先輩が発している「今話しかけるんじゃねぇオーラ」こそが内的行動です。

恋人ができたばかりの幸せそうなAさんは「幸せオーラ」
それをひがむBさんは「ひがみオーラ」が出ています。

そのように話さなくてもわかるようなオーラ(内的行動)を演技において使わない手はありません。
内的行動を自分でコントロールできるように訓練してください
人が無意識のうちにやっていることを意識的にやり、さも無意識のように見せかけること

練習方法は、ふたり向かい合ってのにらめっこです
そのときに内的行動だけで笑わせようとしてみてください(自然とインナーモノローグを言っているかもしれません)
そうすると感覚がつかめると思います。
インナーモノローグはサークルを伝って電流のように相手に言います

4. 台本分析

まず大前提になるのが、作品に出てくる登場人物は、役の大小に関わらず必ず欲求を持っています。これを「目的」と呼びます。
その目的を達成するためにシーンの中にいる相手役がどう変化してくれたら目的を達成できるでしょうか。
相手役を変化させたい状態を「課題」と呼びます。

その課題を達成させるための方法を「行動」と呼びます。

(例)
オーディションに合格したい(目的)ので、オーディションの審査員に自分のことを気に入ってもらう(課題)必要がある
そのため、バク転をする(行動)ことにした。

目的

・作品全体を通しての目的
・各シーンごとの目的
・セリフごとの目的
があります
一貫した行動をすることで、キャラクターに共感したり応援したくなります。

課題

キャラクターは自ら変わろうとしてはいけない、シーンの中で相手を変えていく「行動」によって相手を変えていく・変わっていく。これによりドラマチックになります。
作品の中のキャラクターがどんなに不安や恐れを抱いていても、「自分は正しい、相手が間違っている」という視点に俳優が立つ必要がある。

例えば、好きな異性がいてその人付き合いたいという「目的」があり
そのために相手に自分を好きになってもらう「課題」がある
このときに自らを変えようとしないで(好きになってもらうための「行動」をしないで)自らが変わってしまう(諦めるetc)と物語の中でドラマが起こらなくなってしまいます。
※もし台本の中で告白しないで諦めるというようなシーンがあった場合、そのシーンの目的は「相手に自分のことを好きにさせる」ではなく別の目的がある

課題の重要性

実際に自分が演じる段階において、この「課題」というのがとても大事になってきます。
俳優はどうしても、自分がどう演じようか、どういう風にセリフを言おうか等、自分の方に意識が向きがちになってしまいます。
しかし、演じているときに自分に意識を向けては良い結果は出にくいです。
そこで相手に意識を向けるのですが、相手に意識を向けると言っても漠然としていて何に向ければいいのかわからなくなってしまいます。
そこで、この「課題」が助けになってくれます。

「ヨーイ、スタート」がかかったら、「とにかく、この相手を好きにさせよう」とか、「こいつを謝らせよう」といった具合に「課題」を意識することで、相手に集中することができます。

相手に意識を集中するコツ

「課題」を意識することで、相手に集中することができることがわかりました。
コツとしては課題を達成したときのことを具体的にイメージしてからシーンに入っていくと演じやすくなります。
・相手が自分のことを好きになったら(課題を達成できたら)どんな表情をするだろうか?
・相手がどんな言葉を返してくれたら(台本のスジとは関係なく)一番キャラクターにとってベストか?
ということを具体的に考えるのです。
そうすることで、結果的に自分に意識が向きにくくなるので、演技中に不必要な自意識が働かなくなります。

「課題」はセリフひとつひとつにあり(セリフの課題)、その結果シーンの最後に相手がどうなっていてほしいのかという「シーンの課題」に向かっていきます。

やってはいけないこと

演技中に自分に意識を向けてはいけないが、自分の五感に意識を向けることは問題ないということは上で書いたとおりです。
加えて一番やってはいけないこと、気持ちを作ろうとしては絶対にいけません
そうしてしまうと「今」に居れなくなり、相手と交流ができなくなってしまいます。
相手と交流していく中で自然と考えや感情が生まれてくるのです。

行動

演じているときに課題に集中することで自分に意識が向きにくくなるのはわかりました。ではその課題(目的)を達成させるために具体的に相手にどういうアプローチをしていくのか
その方法が「行動」になります。

まず、これも演じるときの鉄則になりますが、絶対に「感情、状態」を演じようとしてはいけません。

普段の生活の中で「怒ろう」と思っていませんよね。
「相手に謝ってもらう」ために「責め立てる(行動)」が、相手が謝ってくれないので結果的に「怒り」の感情がわいてくる
これが普段の生活のリアルです。

作品の中に生きているキャラクター達が繰り広げるドラマを観客はみたいのに、「怒り」という「感情、状態」を表現しようとしている俳優がいたら興ざめです。

シーンの中ですることは「課題」を達成するための「行動」です

2つの行動

行動には「内的行動」と「外的行動」があります。
内的行動は先程説明しました。
外的行動は実際に身体を使ってできるアクションのことです。抱きしめる、肩に手をやる、握手をする等々
この2つを組み合わせて行動をしていきますが、このときの「行動」を「動詞」で言い表せるととても具体的になります。
動詞は、相手に影響を与える単語、なおかつ具体的にイメージしやすい単語を選ぶことがポイントです。
例えば、動詞の言葉でも「遊ぶ」より「からかう」の方が具体的だし、相手に影響を与えやすいですよね。このように行動可能な動詞の言葉を選んでいきます。

「今、オレがした行動はどんな動詞で言い表わせるんだ?」と、いつも意識することでコツがわかってくると思います。

台本分析で気をつけること

目的を選ぶときに気をつけてほしいこと、それは「自己中心的」になって目的を選ぶことです。
これは全体の目的、シーンの目的、セリフの目的全てに言えます。

例えばシーンの中で相手にお金を貸す設定のキャラクターを演じるとします。
その場合、シーンの目的は「相手を喜ばせる」ではなく、お金を貸すことにより「相手に自分を尊敬させる」が良い選択になります。

自己中心的な魅力的なキャラクター

なぜ自己中心的になって目的を選ぶのでしょうか?なぜなら、映画やドラマに出てくるキャラクターは自己中心的のほうが魅力的に映るからです。
一見、お人好しなキャラクターでも、「お人好し」という自分の武器を使って自己中に相手を変えていく。という考え方です。

課題のところでも触れましたが、シーンの中では自ら変わろうとせず、相手を変えていく中でドラマチックな展開が生まれる。
そのため、自分が演じるキャラクターの目的を必ず正当化してください。「自分が正しい、相手が間違ってる」という立場になります。
キャラクターを正当化しないと
「相手も悪いけど、オレも悪いしなぁ…」となってしまい、シーンの中で相手を積極的に変えていくことができません。
そうなってしまうとキャラクターは弱々しくみえ、シーンは退屈なものになります。
たとえ連続殺人犯を演じる時でも「殺すことは正しい」と正当化することが重要です。

*台本分析のまとめ

台本分析をするときには
・台本をよく読み、自分のキャラクターの「全体の目的」「シーンの目的」「セリフの目的」を導き出す
・その目的を達成するには、どう相手役を変えたいか(「課題」)を導き出す。
・その目的、課題を達成するためには、具体的にどうアプローチすればいいのか(「行動」)を導き出す。
・「感情、状態」を演じてはいけない
・「目的」を選ぶときは自己中心的な視点で選ぶこと
・相手を積極的にかえるために、キャラクターの目的を「正当化」する

5. 自分のパターンを崩す

普段の生活の中で

「今に居る」、相手との「密着」は普段の生活でも意識することが重要です。

俳優は色々なキャラクターを演じなければなりません。そのときに普段の自分ではしないような動き、思考、言葉使い等を自分のものにしなければなりません。
染み付いて凝り固まったあなたのパターンをくずしましょう。
普段の自分の動き、表情、言葉、のパターンを崩して自由になっておく必要があります。

自分のパターンを崩すエクササイズ

表情、感情(セリフ)、動作をそれぞれ全く関係のない3つに分割して、それを同時に行います。
わかりやすい例でいうと、若い頃の竹中直人さんがやっていた「笑いながら怒る人」に何か特徴的な動作を加えたものです。

いくつか例をあげましょう

表情 感情(セリフ) 動作
笑顔 怒「ふざけんな、コノヤロー」 コマネチ
泣き顔 喜「どうも、ありがとう」 ヒゲダンス
ガンをつける 悲「もう、だめだ…」 シェー

他にも色々なパターンやバリエーションができると思いますので、工夫して楽しみながら試してみてください。
このエクササイズを日頃から繰り返すことによって、普段の表現力もついていきます。
※エクササイズをやるときの感情、表情は多少オーバーめにやることをおすすめします。またあくまでエクササイズの時だけであり、実際のシーンでは「感情、状態」を演じてはいけません
※動画で撮影して映像をチェックしながらやることをおすすめします。カメラに撮られるのに慣れるというのと、自分が演じている感覚と実際の映像のギャップを埋めていく効果があります